第1章

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学校までは聖羅さんが車を出してくれた。生憎車まで手が出るほど金を持っていない。 「……しかし大弁護士と言えど車は普通なんですね。雪乃の靴もボロボロだったし何かあったんですか?」 踏み込んだ質問だと思った。しかし気になった。単純に金持ちの気分を知りたかった。 「大弁護士なんて大それていますよ。私は自分の仕事を全うしているだけに過ぎません。お金もそうあるわけではないです。車も使えればいい、靴は買い換える時間がなかったんです。仕事に取られてて忙しかったので」 ……なるほど。大弁護士と言えどやはり人。仕事をすれば名前がつく。そういうことなのだろう。 仕事場から十分くらいで学校に到着する。さすがに車は速い。 校門に車を停め中に入り込む。さすがに授業中に大人二人が学校の中とは空気が違う。 「えーとどこのクラスかしら……。クラスが多いと大変よね」 確かにこの辺りでは大きい方の学校だ。しかし都会に比べたら小さく見えるものだ。 「虱潰しに探しましょう。今の時間なら授業受けてるはずですから」 そう言って学校の中を歩き回る。一年生は一階のフロアか。うろうろと歩き回る。一年C組。そこには見慣れた姿があった。 「……いた! でも授業中ですね。終わりまで待ちましょう」 三十分くらい前まで我を失っていた人間だとは信じ難い。すごく落ち着いている。これがオンオフを切り替えられる人間なのか。少しだけ羨ましくなった。
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