第1章

8/12

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
それからしばらく授業風景を観察していた。もちろん先生からの怪訝な目をもらったが、授業を優先させるらしくそのまま授業参観になってしまった。 ……と言うか私達はすごく不審者じみている行動をとってるのではないだろうか。一躍有名人と行動を共にしている私は一体……? それから数十分は聞き慣れたようで聞き慣れないような授業をずっと聞いていた。これはわかる、これは知らないと言う言葉を飲み込むだけでこんなにも違うのか。 そして休み時間。私のような大人とテレビでよく見る一躍有名人。まぁまず怪しい顔をされる。その中で私を怪しい目て見ない人間。それはーーーー 「あっ理央さん……と。どうしてお母さんが……。まさか私をどうにかするんじゃないでしょうね?」 かなり警戒している。まぁ無理もないか。 「雪乃、お前私に嘘をついたな? 親が蒸発したと言ったがそれはお前だけの話だ。事実親がこうして迎えに来たということは蒸発したのは親じゃない、お前だ。そうだろ?」 少し怒り気味になってしまったがこういうしか出来なかった。私は本当に不器用だなと、そう思った。 「……ごめんなさい。でも私の気持ちを組んでくれなかったのは事実です。せっかく入った第一志望の高校なのに一ヶ月で転校。しかも両親と別れて暮らすなんて私には考えられなかったんです。だから……だから……」 そうか。たからそれを否定したかったのか。否定して、誰かが悪いとしたかった。それが自分であっても……か。 「……わかったわ。もう何も言わない。私も振り回したのは事実だからね。私も悪かったと思う。だから、今後は二人で相談しながら決めましょう。お願い、戻ってきて。私は雪乃がいないとダメなのよ」 何とも子煩悩な有名人だ。意外な一面を見た気分だ。 「……ちょっと考えさせて。放課後までに答えを出すから」 そう言って教室に戻っていく。さすがに人生の英断はすぐには下せない。気持ちは痛いほどわかる。だから私は何も言えない。その気持ちは何度も、味わっているから。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加