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───つまらない日常が愛おしくも狂おしい。
I
『本当にいつも勝てないね』
『次の糧にはしてるから。弱くないのに勝てないってことは自分から無意識に負けてるのかも』
『うーん、接待?その割に友達は私しかいないよね』
『友達なんていらないって。お前がどうせ友達100人分だよ』
浮かんだのは上村 青子─うえむら あおこ─と俺の会話の一部分。
どこまでも不似合いな2人の、記憶の欠片。
でも、心のどこかに。何かしらの感情を残した思い出。思い残し。
でも、それは仕方のないことで。
友達どころか家族とも話していない俺が、1番というか唯一だった話し相手を思い出すのは当然だと言えるはず。
どうやら俺は天性の無勝男で、日々を充実に過ごせない人間らしい。性質らしい。
だから。気がつけば上村青子は俺の傍からいなくなってた。
なんてことはなく、確りと、対面して、いなくなった。
───俺の中でアイツは死んだんだ。
冷たい性格と笑顔と共に。
アイツがいない今、俺は。
青子の屍を越えて生きている。生きて行く。
まったく前進しない人生を歩んでいく。
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