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真っ暗な部屋。
一定に保たれた空気で満ちている、その空間は俺を掴んでは離さない。
光源はディスプレイのみだけれど、このボロアパートの一室全体はボンヤリと照らせてしまう。
ワンルーム、トイレはあるのに風呂なし。
地震なんて来ようものなら、いやこなくても。今にも崩れてしまいそうな二階建てアパートだけれど、俺は一向に離れる気がない。
大家さんは良い人で、ここに住んでる人達とも仲良くさせてもらってる。
なにより、肩書きのない俺にはここの家賃の安さが堪らない。
「そろそろ1週間経つし、買い物行かなきゃなぁ───ッ!?なにやってんだこの馬鹿」
ディスプレイには有名なオンラインゲームが映し出されていて、1人だけ敵陣に特攻していくのがハッキリと見える。
嘘だろ。俺ちゃんと暫く待機って言っといたよね。
今回の敵は守りに回ったら強いからって言っといたよね。
「また負けるのかよ……」
俺は待機中にキーボードを叩いていく。
チームのメンバーにメッセージを送る。
返事など待たずに、ゲーム機の電源をoffにして、ディスプレイも消す。
暗くて何も見えない。網膜に焼きついた光の残滓がフワフワと脳裏を漂う。
「はぁ───。」
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