来るわず日常〝表面〟

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最初こそ、その見た目に騙されかけたけれど俺は本性を1時間で看破した。 それも懐かしい記憶ではある。 本当に可愛い女の子だったのに。 目の前にいる菱餅とのファーストコンタクトを思い出す暇もなくアイツは可愛こ素振りを止めて俺に詰め寄る。 俺が一歩下がったのは反射だ。ご愛嬌だ。 「ちょっと買い物付き合って」 「嫌」 そんなことだろうと思ったから俺は間髪入れずに言って、更に念を押す。 「それが用ならもう帰れ。じゃあね」 素早い動きでドアを閉め───。 「おい、挟むな足ッ!!」 「いいじゃないの。どうせアンタ暇でしょ。丁度買い物行こうとしてたんじゃないの?」 「もうコンビニ行くのはやめたよ」 「そっか。わかったよ、おれは退散するよ」 「悪いな。じゃ、また」 俺がそう言うと菱餅は本当に足を退けて、ドアはすんなりと閉まる。施錠する。 それにしても、なににしても。 こんなに引き際がいい菱餅 遥奈もなかなかに珍しいというか、気味が悪い感じだった。 大人になったということなのだろうか。 そりゃもう俺たちは19歳と数ヶ月。精神的にも熟す機会なのだろうが。 どうだろう。 俺は大人に近づいているのだろうか。 人生は一歩も前進していないのに、大人という道筋に向けて歩めているのか。 きっと。歩けているんだ。成長は止められない。 「さて、菱餅はもうどっかいっただろう。俺がコンビニに行くのも誰にも止められない」 と、いうことで。俺はタックルで壊せそうな心許ないドアを開ける。ゆっくりとこっそりと開ける。
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