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ますます悪魔っぽいし、魔女っぽいな。
タチが悪い。
でも、まぁ。いっか。
車なら歩かなくて済むし。部屋にいる時と何も変わらないし。
菱餅の言った通り暇だし。
メリットはないけれど、デメリットもない。
どんな裏があるかわからないのが怖いところだけれど。
俺はもう一度深く空気を吐き出す。
「いいよ、行く。仕方ないから俺が折れるよ」
「じゃ、こっち」
お礼くらい寄越せと思いもしたが、それも面倒くさく、なにより小さい人間に思われたくないから。黙ってついていく。
そして乗り込む。迷わず助手席。
「こういう時って男の子が運転しない?」
「着いてくるって事だけで勘弁してもらいたいんだけど、いいよ。運転する」
乗り込む。しぶしぶ運転席。
そういえば運転なんて久々だ。
菱餅だから別にいいけど、誰かを乗せるなんてしたことないからなぁ、しかも他の人の車だ。勝手がわからない。
「できれば見ないでほしいんだけれど」
「なんか紗人くんの行動してる姿って新鮮だからさぁ」
「なるべく他人には見られたくないんだ、動いてるところとか」
───へぇ。と何ともなさそうに菱餅は返して、興味がなくなったのか身体ごと座り直して前を向く。
青子ならきっと。
『究極の自意識過剰。誰もすず君をそこまで見てない』
と、そんな風に言うのだろう。
青子の記憶は俺の脳内をまた更に深く傷つける。
夜は静かだ。
なんともない波紋にも気がついてしまうし、気にしてしまう。
だから俺は。意識しないように、アクセルを踏み込んだ。
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