第1章

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バスでは、私は鈴の隣に座った。 私は、美里の事が気になって、バスに乗る時ずっと見ていた。 美里は、ヒメたちと一緒にバスの1番後ろの真ん中に座らされていた。 私が気にしちゃいけないんだろうけど、やっぱりあれから美里の事が気にかかる。 こんなことになったのは、私も原因の一つなのに、ヒメ達に対して怒りが湧き上がる。 (なんて自分勝手なんだろう…) そう思う事に、自分に嫌気がさしてくる。 「優希、気にするのも分かるよ」 私の態度に気づいた鈴はそう言ってきた。 どうやら、鈴にはお見通しのようだ。 『でも…。私があの時…』 「…優希。それは私も同じだよ。1番辛いのは、春香の方じゃない?」 そう言って、チラッと斜め前の席を見た。 それにつられて私も斜め前の席を見る。 そこには春香が座っていた。 (確かに、辛いのは春香の方かもしれない…) そう感じた時、 「ねえ!何持ってきたか、カバン見せなさいよ!」 バスの後ろで声がした。 声に反応した生徒たちが一斉に振り向く。 私も咄嗟に後ろを見ると、橋下 千佳が美里のカバンを取り上げようとしていた。 「ちょ、…やめて…!」 美里も、必死で抵抗している。 その時、前の方から担任が叫んだ。 「おい!静かにしなさい!せっかくの修学旅行だぞ!喧嘩はやめろ!」 その声に反応した、橋下 千佳はしぶしぶ握っていた美里のカバンから手を離した。 それを確認した先生は再び席に着く。 (なにが、《せっかくの修学旅行》だ…) 先生も何もわかっていない。 自分のことが可愛いから、あたかもいじめがないように振舞う。 後ろを見ていた生徒達は、みんなまた前を向いて座り直した。 私も、再び前を向いた。 「…ねぇ。あれは持ってきたんでしょう…?」 また、後ろの方で声がした。 「……うん」 美里がそう返事をした。 決して声は大きくはなかった。 でも、私の耳には はっきり聞こえた。 そこで、私は意識を手放した。
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