第1章

6/10
前へ
/13ページ
次へ
それからは、私にとっても見てて辛かった。 修学旅行の班決めが終わった次の日から、ヒメ達による美里へのいじめが始まった。 朝は、美里を正門で待たせて、教室まで持ってもらう。 お昼は、みんなの分のお昼を買ってきて渡す。美里の分はもちろんない。 ヒメがイライラしている時は、美里の持ち物を窓から投げたりしていた。 他にも、休み時間のたびに5人でどこかに行っていたし、放課後もそうだった。 たぶん、このときにもっと凄いことされていたんだと思う。 本当に見ていて辛かった。 私達があのとき引き止めていれば、美里はいじめにあうことはなかったかもしれないのに…。 でも、そんな事をしたら私達がどうなるかわからなかった。 ヒメは、そう影で言われるくらいワガママで自己中心的だった。 父親がファッション関係の社長らしく、家はお金持ち。 母親が元モデルをしていた、と言うだけあって容姿も優れていた。 高校1年の時は違うクラスだったけど、2年になって、同じクラスにぬり特定の4人でつるむようになった。 《松永 愛》 《村田 ひかる》 《橋下 千佳》 《水原 もも》 この4人に捕まったら、最後。 学校を辞めるか、ターゲットを変えるまで待つか、の二択しかなかった。 そして、今回が美里に決まった。 「田上さん、さっき先生が言ってた修学旅行の紙ー…って聞いてる?」 その言葉にハッとして、坂本くんが話しかけていたことに気づく。 『ああ!うん、なに?』 「ここなんだけどー…」 修学旅行が近づくたびに、私は憂鬱になっていった。 きっと、この1ヶ月間以上に、美里にとって地獄が待っている。 そんなことを考えてしまうのに、私ばっかり修学旅行が楽しみ、とは思えなかった。 そう思っていた。 でも、違った。 地獄になるのは、美里だけじゃなく、このクラス全員だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加