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そして斎藤はそっと初依子の両腕を自らのたくましい腕の下に置くと、唇を重ねながらか細いうい子の両腕を抑えた。か細い女の腕が小さな頭の上に上がり、小さな身体はもはや抗うことさえ出来ない。
気怠い西日の差す寝屋は、二人の呼吸でむせる様に熱い。一呼吸ずつの吐息が、差し掛かる陽の光と共に熱気を帯びていく。
やがて斎藤がうい子の頬を軽く抑えて唇をそっと離すと、斎藤の体がうい子の中に静かに力強く奥まで入って来る。斎藤の体の鼓動は動く度に早くなり、うい子の体を導いていく。
何度も波打つ甘い感覚が、うい子の身体の芯まで支配していく。このまま溶けてしまいたい。うい子はこの日ほどそう強く思ったことは無かった。
「大丈夫か。」
斎藤は乱れたうい子の髪を優しく撫でながら、快楽に喘ぐ表情をうかがう。うい子は言葉を次ぐことも出来ずに、微かに頷きながら唇を震わせた。
この腕の中に永久に閉じ込められていたい。このままこの人の腕の中で朽ち果ててしまえばいい。もう今まで私がいた場所に戻れなくてもいい。
再びけたたましく鳴き始めたひぐらしの声が、斎藤の汗をうい子の上でかき消していく。めくるめく感覚と、うだるような暑さと快楽が、二人の感覚を麻痺させていく。
夜が更けても、二人が体を分かつことは無かった。
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