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知香の言うこともわかる。
だけど結婚とは、時に我慢も必要で、長く一緒にいるのだから、辛い時こそじっと耐えなくてはいけない、そう思っていたわたしは、どう耐えるか、を模索して辿り着いたのが現状なのだ。
そこを否定されると、どこから考えてよいのやら頭の中がパニックになりそうだ。
「待って待って、わたし、確かに男としては愛情を持てないかもしれないけど、家族としては上手くやっていきたいし、すぐ離婚、とかは考えたくないの。」
知香はしばらくわたしを眺めた後、冷めきったコーヒーを飲み干した。
そしてゆっくり、口を開いた。
「気持ちはわかるよ、夏は完璧主義者だもの。でも。わたしが望むのは夏の幸せなの。」
諭すような口振りとは裏腹に、知香の目には悲しい色が漂う。
知香は続けた。
「我慢にもね、幸せになるために必要なものであれば、それはすべきだと思う。でも、必要ない我慢もあるんだよ?………ねぇ、よく考えてね?」
わたしは何か間違えいるんだろうか。
親友に心配させているこの現状は、正しいのか。
何もない暗闇に、わたしはぽつんとたたずむ感覚になった。
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