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――ほとほと……
――ほと……
――ほと…………
………………。
…………。
……。
――ほとほと……
――ほと…………
――ほと…………
音が聞こえてくる。
いったい、どこから聞こえてくるのだろう?
――ほとほと
――ほと
――ほと
遠く、近くから。
これは、何?
………………。
…………。
……。
執拗に。
倦むことなく
その音は、僕の耳たぶを、鼓膜を叩いている。
心臓の鼓動?
血の流れ?
それとも、何かの機会なのだろうか?
分からない。
分からない。
耳を澄ます。身体を硬くする。そうして僕は、音を探る。
………………。
…………。
……。
一定の強さで、
一定の速さを持っていて。
何かを……。
そう、何かを叩いているようだ。
何を……、
どうして……、
そんな風に叩くのか……。
そんな事を考えながら、僕は、音に身を委ねている……。
お母さん。
どうしたの?
何?
ねえ。
…………。
ねえ?
お母さん?
ねえってば?
急に、どうしちゃったの?
……お母さん?
――――。
え?
何て言ったの?
聞こえなかったよ。
もう一度言ってよ。
ね、お母さん。
……お母さん。
………………。
…………。
……。
朝。
いつもの目覚め。
目の前には天井。障子からは朝の光。身体はけだるくて、視界はぼんやりとしている。
「ふう……」
大きくため息をつく。
ぬくもっている後頭部に両手を差し込んで、それで、ぼんやりと天井を見つめている。
一日の内で、唯一と言ってもいい、至福の時。
目覚めのひとときを、ぼんやりと、ただ怠惰に過ごす。
これが冬だったら、ぬくぬくと温かい布団に繭のように包まれて、思わず顔面がにやけてしまう程なのに、あいにくと今は夏だった。
くしゃっと丸めたタオルケットをお腹に感じながら、ただ、天井を見つめている。
頭の中を空っぽにして……、
ただ、こんな時間がいつまでも続けばいいと思いながら……。
――ぼお~ん……ぼお~ん……
……………………。
…………。
……。
時計の音がきっかり七つまで鳴るのを耳にしてから、僕は身体を起こした。
トイレに行く。
洗顔する。
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