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「これ、どうです?」
何度めかの刃の台詞と、背中に合わせられるリュック。
すぐに外され、彼女はまた不満げに鼻をならしている。
一通り見てまわったが、いまひとつ思うような物は無いらしい。
「また今度でいいよ」
と、サトルが言った直後。彼女はまた手近なバッグを取った。
「ちょいとコレ、試してみます?」
A4サイズ対応!とPOPのついた、小ぶりだがしっかりマチのあるメッセンジャーバッグ。
合皮らしいが安っぽくは見えず、丈夫そうだ。
「あ、意外にいいじゃないですか。コレにしましょ」
「でも高いよ、これ」
「こう見えて倹約家なモンで」
ひょいと取り上げ、どれにします?と色違いを次々あてて見ている。
「だいたい、貰う側が気にするこっちゃ無ェですよ」
「そうかなぁ?」
ほぼ無尽蔵の、資産家令嬢の財布を預かる刃。
それでも一応気にして節制し、自分の小遣いを確保しているようだ。
苦笑をごまかすように、サトルは店内の照明をあおぐ。
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