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「…で、センセはどうしてこんな所へ?」
「とくに用事は無いんだけれど。クリスマス商戦なお店を見るのが楽しくて」
「何だ。ひめせんせいへのプレゼントでも、誂えに来たのかと思いましたよ」
「あぁそれもいいねぇ」
良い言い訳ができた、というように笑っている。
どうも本当にフラフラしているだけのようだ。
話が途切れると、傍の店先を冷やかしている。
刃はしばらくその背中を眺めてから、ついと横へ立った。
「……センセそのリュック、自前です?」
「え?」
聞いていなかったらしく、もう一度言うと眉を下げられた。
「不自然かな? お手頃価格でたくさん入るものを選んだんだけれど」
「もうちょっと見栄えのいいもんがあったでしょうに」
「俺のバイト代じゃこんなもんだよ」
思い出したように、大学生サトルの顔で肩をすくめている。
そういえば、サトルは短期のアルバイトを転々としていた。
そのバイト代は、殆どが本に化けているのは知っている。
「何か、買いましょうか?」
「いいよ。そんな意味で言ったんじゃないもの」
「だってセンセ、明日はお誕生日でしょ」
おや?と、今度は首を傾げている。
忘れているようだ。
やっぱりかと刃は笑ってしまう。
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