地元の山ちゃん

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 里佳は大きく溜息をついた。 「予約も添乗員もダメってことになると旅行代理店ってもうダメなのかなあ」 「絶滅危惧業種」 「おい、そんなこと言うな。ヒロト、もっと飲め」 「なんだよ、呼び捨てかよ」 「あーあ、私、また仕事探さないと」 「おまえ、働かなくても困んねえだろうが」  田村家がこの辺の大地主なのは皆がよく知っていることだ。櫛田葬儀店も田村家の土地に建っている。 「そんなことないよ。働かないと。ヒロト、あんたもヒトのこと言ってらんないよ。いつまで実家でプラプラしてんの」 「今度はあんた呼ばわりかよ」 「なんでもいいよ。あ、そうか、ヒークンは実家継ぐのか」 「いや、それはないわ。無理。家族経営の葬儀屋も絶滅危惧業種だから」 「でもね、旅行代理店の仕事はネットに負けそうだけど、お葬式はネットじゃ代えられないでしょ。絶対に無くならないでしょ」 「いや、最近は簡単なお葬式っていうか、お通夜とか告別式とかやらないご遺族様も増えてるし、セレモニープランとか言ってホテル業界が大攻勢かけてきてるからな」 「そうなんだあ。難しいね、どの業界も」  山川がひっくり返した焼鳥の下で赤く燃える備長炭が音を立てた。  今日も二人の他に客は現れそうにもなかった。
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