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三国の後妻で杏の母親である真知子の入院している病院は車で十五分ほどの距離だった。
「ごめんね、毎日」
身体を起こした真知子が二人に申し訳無さそうに言った。
「ううん。全然。それより、体調はどう?」
杏が真知子の手を握る。
「どうって、変わらないわよ。昨日も来たじゃない」
「そうだけど、心配だから」
「杏がなあ。本当に心配してるんだ」
三国は他のベッドに気を配りながら低い声で言った。
「やだ、大丈夫よ。十二指腸潰瘍ってもっと早く診てもらえば入院もしなくて済んだって言ったでしょ」
「わかってるよ。わかってるけどな、杏は心配なんだ」
「なによ、心配してんのは三国さんじゃない」
「そうだよ、お父さんのほうが心配してるの」
「まあな。とにかく、もう明後日ぐらいには退院できるんだろ?」
「みたいだけど、担当の先生が学会かなんかでいないらしくて、まだちゃんと話を聞いてないのよね」
「わかった。もういいから。大事にして、な。寒くないか。毛布とか、看護婦さんに頼んどくか、な」
気を揉む三国を前にして真知子と杏は顔を見合わせ小さく笑った。
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