焦がれていた

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「鶴丸さん!きてください!」 「お、おい!一体どうしたっていうんだ!?」 ドタドタと煩い足音を響かせながら今剣が現れたと思った次の瞬間には短刀とは思えない力で俺の腕を引き、なされるままに廊下を共に走っていた。 ー鍛刀部屋…? 扉の前に着くとぺいっと腕し放り出され「どうぞどうぞ!」とそれはもういい笑顔で先を促されたのだった。 「一体何だっていうんだ…邪魔する、ぜ………」 扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは色鮮やかな蒼。 それを見た瞬間に身体が硬直した。 「……おや、鶴丸ではないか。久しいな」 蒼の振り袖をひらりと舞わせながらその人はゆったりと上品に笑いかけてきた。 「みか、づき」 俺は一歩踏み出し、更に一歩踏み出し、ゆっくりと相手に近づいていく。 ー嗚呼、これは現実なのだろうか。 待ち焦がれていた相手が目の前にいる。 近づいてそれが蜃気楼のように地に溶けてしまったら。なんて、自分の思考に思わず心の中で笑った。 「三日月!」 相手の胸に思い切り飛び込んでみたが、溶けてしまうなんてことは、やはりなかった。
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