side M

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早めの夕飯を食べ終えて、食後の飲み物を飲んだら帰るのがいつものパターン。 洋ちゃんの家は、地下鉄で名古屋まで戻って、赤電車に乗り換えて最寄駅からさらに自転車で10分ほどの場所だと前に聞いた。 所要時間は1時間程。 物凄く遠いわけでもないけれども、近いわけでもない。 ここにお泊りしてくれるときは、必ず電車で来てくれるわけだからそれなりに電車代だってかかってる。 車で水族館に行くときも必ず迎えに来てくれるし、ここまで送ってくれる。 駐車場代だって払わせてくれない。 「一人暮らししてるんだから、気にしないで。」 付き合いだして、しばらくした頃にお金のことを聞いたら微笑んで頭を撫でられてそう言われた。 食べ終えたお皿を一緒に運びつつ、今夜は何を飲むだろうかと聞いてみる。 「洋ちゃんが昨日、持って来てくれたマドレーヌがまだあるからコーヒーにしてマドレーヌを食べる?それとも、ミルクとお砂糖たっぷりのココアにする?」 どっちを選んだとしても可愛い選択だと思う。 「顔が笑ってるよ、もぅっ。」 ちょっと拗ねたような怒ったような口調が可愛いから仕方がない。 好きな人をからかいたくなる小学生のような気持ちにさせられてる。 「ふふっ。だって、洋ちゃんが可愛いから。」 スポンジに洗剤を垂らして、泡をもこもこと作る洋ちゃんの手元。 あのふわふわした泡みたいに柔らかいんだよね、洋ちゃんの存在が。 「マドレーヌは明日、会社に持って行って食べたらいいよ。そしたら、会社にいても俺のこと、思いだしてくれるでしょ?」 ずるい。 洋ちゃんは本当にずるい。 可愛い洋ちゃんのくせに、ドキドキする言葉を紡ぎだすんだから。 明日、確実に会社でマドレーヌを食べて洋ちゃんを思い出してしまう。 ずるい。 「じゃぁ、ミルクとお砂糖たっぷりのココアだね?」 「うん。作りすぎたらどんぶりに入れてくれていいよ?」 「ふふふっ。」 スーパーマンだった洋ちゃんを思い出す一言に笑ってしまった。 思いだしても、もうチクリともしない。 むしろ、あの日の洋ちゃんを思い出して笑ってしまう。
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