side M

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自分の心と折り合いをつけて、マグカップに手を伸ばすと、洋ちゃんも同じようにマグカップに私の後ろから手を伸ばす。 私が淋しいと思う気持ちを汲んでくれてるから、急いで帰ろうとはしない。 水族館でデートした日には、こんな風にならないのに。 ちゃんと送ってもらったら、車の中で掠めるようなキスをしてお別れができるのに。 ここにお泊りに来てくれて、みっちり二人で濃密な時間を過ごした方がたっぷり充電できてるはずなのに。 いや、だからこそ、離れ難いのかもしれない。 「一週間分の美代ちゃんの気持ちが入ってたよ。それに、惚れ薬も盛ってくれたみたいだね。」 マグカップを置きながら、クスっと笑った洋ちゃんの声を聞いて、私も笑った。 それから、ココアを飲み干して、背中の洋ちゃんの方に体を向けて首に手をまわして抱きついた。 目を瞑って、洋ちゃんの首筋に鼻を当てて胸いっぱいに洋ちゃんの匂いを吸い込む。 大丈夫。 また、一週間、頑張れる。 私の背中に腕をまわして、洋ちゃんがギュッとしてくれた。 「来週のおやつは何がいいかリクエストがあったら連絡してね。用事がなくても連絡していいから。」 私から連絡するのは、気がひけるって前に言ったことを覚えてるからだと思う。 ときどき、優しく諭すようにそう言ってくれる。 「洋ちゃんがいつも水曜日に連絡くれるから、きっと平気だよ。」 抱きついていた体を少し離して洋ちゃんの顔を見上げたら、目が合った。 整ったキレイな顔なんだけど、洋ちゃんと言う人を知れば知るほど可愛らしく見える。 ほら、笑った。 「週の真ん中で美代ちゃんの声を聞くと、週末まであと半分だと思って頑張れるんだからいいでしょ。」 キレイな顔して可愛らしく笑って私の心をキュンキュンさせてくる。 「いいよ、いい。凄くいい。いつも水曜日には連絡をくれる安心感が、凄くいいよ。水曜日に洋ちゃんの声を聞くと私も頑張れる。」 笑って、伝えた自分の気持ちに何も疾しいことはないけれども、言った後に思った。 これじゃぁ、自分のダメだった過去の恋愛と比べてるみたいだなって。
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