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「これ、いっただきー。」
お昼休憩中の社食で目の前から消えたマドレーヌ。
「ちょっ、返して!!」
洋ちゃんが私のために用意してくれた可愛らしくラッピングされたマドレーヌを同期の郡司になんかあげてなるものか。
取られた瞬間に手を伸ばして取り返した。
コイツめ。
「ちっ、ケチ。」
ケチと言われても洋ちゃんの気持ちがたくさん詰まったマドレーヌはあげられない。
それに。
「郡司にだったらお菓子を作ってくれる女の一人や二人、いるでしょう。」
勝手に私の前の席に座った郡司を見やる。
洋ちゃんほど背が高いわけじゃないけれども、もう少しで180センチに届きそうな背は高いほうだろう。
洋ちゃんほどキレイな顔をしてるわけじゃないけれども、それでも整った顔つきとそれなりにきれいな肌。
性格には難アリだと私は思っているけれども、悪い奴ではない。
うどんをすすりながら、こっちを見てくる。
そんなに羨ましいのか、マドレーヌが。
あげるわけがない。
私の隣に座るこれまた同期の柳沢佳奈が笑って郡司に解説してる。
「郡司、これは無理無理。さっき私も貰おうと思ったけどダメだって言われたもん。」
バカにしたような笑いを口の端に浮かべて
「あぁ、どうせまた彼氏だろ。今度の彼氏はどんな問題児だよ。」
と、意地悪極まりないことを言ってくる。
もちろん、過去の私に問題があったからこの言い草になることは百も承知だけれど。
洋ちゃんは問題児じゃない。
どこも問題じゃない。
私から見たら。
郡司や佳奈から見たら、問題児になるだろうか。
ちょっとばかりのオトメン具合が過ぎることは。
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