side Y

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美代ちゃんの家から自宅への長くはないけれども短くもない距離と時間。 手芸用品店に付き合ってもらって買った戦利品と自分の荷物を持って、地下鉄の駅へと急ぐ。 マンションが立ち並ぶ住宅街。 犯罪の匂いがプンプンするような危険な場所ではないと思うけれども、美代ちゃんの住んでるマンションはオートロックでもないし、今、歩いてるこの道だって街灯と街灯の間は暗い。 大通りのように煌々と明かりが灯るようなお店もないし、逆に夜なのにそんな煌々と明かりの灯るようなお店があったら治安が悪くなりそうか。 プロポーズしたら、一緒に住もうって言ってみようかな。 順番があべこべになっちゃうけれど。 地下鉄桜通り線。 これで名古屋まで行って、そこで赤電車に乗り換え。 遅くない時間だけれど、桜通線は空いてる。 空いてる席に座って、なるべく自分の足を手前にぐいっと立てて姿勢よく座る。 大きな体の分だけ、迷惑にならないように気を遣ってる。 プロポーズかぁ・・・。 半月前に栄で次郎とイトちゃんをお祝いしたときのことを思い出す。 幸せそうな次郎とイトちゃんはもちろんだけれども、友人の圭吾が来年の春に結婚すると自慢してきた。 俺の方が早く美代ちゃんと付き合いだしたのに。 美代ちゃんの誕生日にプロポーズして、それから結婚式の準備に取り掛かって、美代ちゃんが30歳になる前に結婚しようと思っていた自分の計画。 比べるようなことじゃないけれども、鮮やかに自分の計画よりもさらっと走り抜けるような手腕を発揮した圭吾が眩しく見えた。 参考までに、どこでプロポーズをしたのか聞いてみたら 「あぁ?ホタル~、って感じだな。」 有名な俳優さんの真似をしだした圭吾の言わんとすることがすぐに分かった。 ホタルを見に行ったのかと。 その時期にしか見られないホタルを見に連れて行って、そこでプロポーズしたって、まさか、圭吾が。 そんなロマンチックなことを考え出して実行したという圭吾に軽く嫉妬した。 思いつきもしなかったなと。 「だけどさ、あいつ、俺がオブラートに包んだ言い方したら、分かってなかったみてーでさ。」 それはそれは幸せそうにまた語りだした。
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