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「圭吾、参考までにオブラートに包んだ言い方ってどんな言い方か教えてよ。」
俺は、失敗しないぞと。
圭吾がニヤッと笑った。
あぁ、本当のことを言う気がないなと思った。
きっとくだらないことを言って煙に巻く気だと。
「俺のパンツを洗ってくれ。」
ホタルを前にしてそんなこと言われたら、ロマンチックな雰囲気、台無しだ。
「洋介、無視すんなよー。本当はなっ。」
本当は、何て言ったんだろう。
オブラートに包んだプロポーズ。
期待しつつ、次の言葉を待つ。
「君の作った味噌汁が飲みたい。」
文字通りの意味で受け取られたら?
いや、その前にホタルを前にしてその言葉もないだろう。
きっと、圭吾は言う気がないんだな。
だよね、一生に一度のプロポーズ。
大事に二人だけで胸の中にしまっておくのもロマンチックだ。
「ちっ。笑ってくれねーのかよぉ。よーすけちゃん♪」
「面白かったよ。それで、ホタルの前では失敗したなら、どこでどうやって成功したの?」
教えてくれるんだろうか。
「ホタルを見た後、星がいっぱい見える道の駅まで車を走らせて、星を見ながら、シンプルに。・・・なんちゃって。」
なんちゃっては、いらないだろう。
女の子4人が座るテーブル席を優しい目をして眺める圭吾を見て思った。
人は、変われる。
好きな人のために変われる。
ロマンチックなことをしそうにない圭吾でさえ、プロポーズとなったらそんな行動をするんだ。
俺だって、やるときは、やれるはず。
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