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地下鉄が名古屋駅に到着した。
美代ちゃんの家から自分の家に帰るときはいつも思い出す。
一番最初に出会った隆と彩ちゃんの結婚式の日のことを。
地下鉄から赤電車に乗るために地下を歩いて赤電車方面へ。
日曜の夜だというのに、まだまだ人が多い。
いや、多いと思っているだけで少ないのかもしれない。
名古屋で働いていたら、この人波が普通なのか多いのか少ないのかが分かるのかもしれないけれども、俺の勤務先は名古屋港。
春先に出会ったときは、肌寒いと言うよりも寒かったけれどもあれから季節が通り過ぎて今や夏の暑さも峠を越えた。
赤電車のホームもまた、けっこうな人。
ひっきりなしにホームに進入して、停車して、出発する赤電車。
ランプと電光掲示板を確認して自分の乗るべき電車がくるラインに並ぶ。
ふっ、あの日、顔をぐっちゃぐっちゃにして泣いた美代ちゃんに心を奪われたんだったな。
美代ちゃんの誕生日の10月でちょうど付き合いだして半年。
半年、真面目に付き合っていたらお互いに適齢期だし早すぎるという印象もないだろうか。
それとも、まだ早いだろうか。
誰かにケチをつけられるような結婚はしたくない。
誰からも祝福されるような結婚がしたい。
美代ちゃんが屈託なく笑っていられるように。
やってきた赤電車に乗って、ぼんやりと外の風景を見ながら1カ月半後の誕生日に何をプレゼントしようかと考える。
ふと、自分の買った戦利品を見て思った。
編み物ができたらなと言った彼女。
編んであげようか。
美代ちゃんが自分では絶対にチョイスしないような真っ白でふわふわの毛糸でマフラーを編んであげようか。
世界に一つしかないのは特別って言っていたから。
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