side Y

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「家の中でしかできない楽しいことをするのもいいよね。もちろん、美代ちゃん次第だけどさ。」 一瞬感じた元彼への殺意を封じ込めて、努めて明るく話題を振った。 「なに、それ?」 笑いを含んだ声での返事に、俺も笑う。 「ん?内緒。そうだ、買い物、してきて欲しい物があったらメールしておいて。美代ちゃんの家に行く途中で、買って行くから。」 女性の体が男とは違うことは、姉二人がいて育っただけに少しは理解してるつもり。 「本当?助かります。思いついたら、明日の朝、メールするね。」 「ん、分かった。じゃぁ、ゆっくりしてね。もうすぐ、持ってくおやつが焼きあがるから。」 「洋ちゃん、いつもありがとう。楽しみにしてるよ。」 「うん、お休み。」 「また、明日ね。」 美代ちゃんが電話を切るのを待って、電話を切った。 ・・・それにしても、元彼への殺意が拭えない。 生理だったら、会わないって・・・。 美代ちゃんが、元彼についてそう言ったわけじゃないけど、確実にそうだったから、さっきみたいな言葉が出てくるに違いない。 そりゃ、男だから、家の中で会えば、抱きたいと思うのが普通だと思うけど抱けないなら会わないって、それ何だよって感じだ。 抱くだけが目的じゃないだろうって激しく憎たらしく思える。 一緒にいるだけで楽しいから。 一緒にいるだけで癒されるから。 一緒にいるのが自然だから。 安心して素を出せる相手だから。 抱けなくたって、好きな相手と過ごす時間と空間はなにものにもかえがたい宝物だろ。 美代ちゃん、男を見る目、なさすぎ。 ・・・男を見る目、なさすぎた結果が俺と付き合ってくれてるのか。 複雑だ。 これで元彼がハイスペックなスーパーマンでも、やっぱり気になるもんな。 元彼が最低最悪のダメ男の方が、比べられたときに、いいかも。
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