3349人が本棚に入れています
本棚に追加
遮光カーテンの隙間から差し込む一筋の光の線と、すべてを遮断できずにほのかな明るさがいざなわれた薄ぼんやりとした室内。
カチャカチャと壁の向こう側から音がする。
上半身を起こして、遮光カーテンを少し引っ張った。
今日も快晴らしい。
8月も終わりだけれども、暑くなりそう。
枕元には、昨夜、私が脱ぎ散らかしたはずの部屋着がキレイに畳んで置かれている。
上着とズボンの間にご丁寧に畳まれて挟まった下着。
もちろん、犯人は洋ちゃんだ。
どんな顔して、いつも畳んでくれてるんだろう。
恥ずかしい。
聞くのも、指摘するのも恥ずかしくて、初めて洋ちゃんがここに泊まりに来てくれた5月の連休からずっと、この朝の行為は続いてる。
いつもありがとう。
心の中で呟いて、キレイに畳まれたそれらを順番に身に着けて、洋ちゃんのいるであろう台所へと向かった。
「おはよう。」
声をかけたら、ガスの火を止めてこちらを向いて微笑んだ。
「おはよう。」
眩しい王子様スマイル。
ギャルソンタイプの黒いロングエプロンの方が絶対に似合うのに、彼が愛用するのは白地に赤い花柄の乙女チックエプロン。
「ちょうど、起こしに行こうかなって思ってたんだよ。残念。寝ぼけながら俺に甘える美代ちゃんが見れなくて。」
ふふっと余裕そうな微笑みを浮かべて、お盆を渡された。
レタスサラダと目玉焼きと野菜スープ。
今日はミルクティーらしい。
洋ちゃんの両手にはこんがりと焼けたトーストが載ったお皿。
「洋ちゃん、いつもありがとう。」
ベッドの上では心の中で呟いた言葉を、言いたかった相手に伝える。
「どういたしまして。美代ちゃんもいつもありがとう。」
微笑む彼の優しい顔を見ると、優しい気持ちになれる。
最初のコメントを投稿しよう!