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「洋ちゃんがお泊りに来たのは何回目くらいだろうなって思っていただけだよ。」
もっとたくさんお泊りに来てくれたら嬉しいなって思ってただけだよ。
口をつけていたマグカップから口を離して、洋ちゃんの喉仏が上下してミルクティを嚥下した様子を横から眺めた。
男性の体、特有のそのでっぱりは、セクシー。
「そっか。あんまりしょっちゅう泊まりに来るわけにはいかないからね。」
「何で?」
私はもっとたくさんお泊りに来て欲しいのに。
こっちを向いて、背の高さから必然的に見下ろされる恰好で目が合った。
純粋無垢な目。
困った犬みたいな顔。
「だって、美代ちゃん独身女性だよ?ご近所で悪い噂になったらダメでしょう?嫁入り前なんだし。」
目をパチクリしてしまった。
今時、嫁入り前だからって、悪い噂って。
半年前の玄関先での修羅場の方がよっぽど悪い噂になると思う。
それに・・・言えないけれども。
週に2回とか、3回とか、男が来てたこともあるんだけどな、ここ。
「そんな顔しないで。」
ふにゃっと笑って、ますます困った犬みたいな顔になって私を見つめてくる。
「もっと一緒にいたいなって思うけど、ケジメは大事だし・・・そのね、ほら、ロマンチックな約束、ちゃんとしたらさ、もうちょっとお泊りとかも・・・。ねっ?だから、もうちょっと待って欲しいなって・・・。」
目を逸らしたり、顔を赤くしたり、モジモジしだした洋ちゃんを見て、笑っちゃいけないと思うのだけれども、可愛らしくて笑いが込み上げてきた。
「ふふっ。」
「あぁっ、もぅ、笑わないでよぉ。」
身長190センチの大男なのに、花柄エプロンの裾を握りしめて
「何でこんな風になっちゃうんだろう。」
とぼやく姿が可愛すぎて、また笑ってしまった。
「待ってるからね。ロマンチックな約束。」
「あぁ、もぅ、ハードルあげないでよ。」
洋ちゃんの口から出たロマンチックな約束がプロポーズだってことが分かるから、我儘を言って困らせるのはやめようと思った。
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