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「美代ちゃんは、マフラーとか編んだことあるの?」 想像通りに、私の出番なく手芸用品店でのお買い物を終えて食品売り場に足を向けようとしていたときに聞かれた。 洋ちゃんの右手には、手芸用品店での戦利品。 洋ちゃんの左手は私の右手と繋がれてる。 「お恥ずかしながら、ないです。編めません。その昔、サークルの子が編んでるのを見て、ちょっとだけ編み方を教えてもらったことがあるんだけど、てんでダメだった。すぐに編み目がわからなくなるし・・・向いてないって悟ったよ。でも、編めたら私もマフラー欲しいなぁ。ざっくりしてて可愛かったし、世界で一つしかないってすごく特別でしょ?」 洋ちゃんの肩が小刻みに揺れて、顔が笑ってる。 「笑うことないでしょ。」 私だって、自分の不器用さ加減に笑ったからいいんだけどさ。 「ふふふっ。だって、想像しちゃったからさ。美代ちゃんが毛玉と格闘してるところ。」 「もぅっ!」 毛玉と格闘だなんて、ひどい言いぐさだ。 「格闘したのは、毛玉とじゃなくて、棒針と自分の指だもん。」 「ぶっ、ふははははっ。」 女子として、どうかと思わなくもないけれども、洋ちゃんの前だったら可愛い女の子にならなくても自然にしていられる。 ほらね、私を見て微笑んだ。 このままの私でいていいんだと安心して思える。 「俺が編み物したら引く?」 「引かないよ。」 想像したら、あまりの可愛さと似合いすぎてる姿に顔が緩んだ。 「でも、笑ったでしょ、今。」 笑ったけど。 「だって、洋ちゃんが可愛いから。」 「もぅっ。可愛いのは美代ちゃんなのに。」 「ふふふっ。」 私に可愛いと言ってくれる人は、洋ちゃんだけだ。 大概の人はキレイと言う。 どれだけ多くの人にキレイと言われたって、洋ちゃんに言われる可愛いには勝てない。 可愛いモノが好きな洋ちゃんに可愛いと言われるのは、最大の褒め言葉。
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