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「冷やし中華ってトッピングに野菜が入ってるのに、サラダもいるの?」
狭い台所で、大男の洋ちゃんと女性の平均から見たら大きめな私で夕飯を作っているところ。
狭い台所がますます狭くなるけれども、一緒に台所に立つのは楽しいからやめられない。
私の疑問は、私が冷やし中華の麺を茹でる傍らでトッピングの野菜を切り終えた洋ちゃんがサラダを作ると言いだしたからだ。
「美代ちゃん、口、開けて。」
お鍋の中の麺を菜箸でグルグルしつつ、隣を向いて口を開けたら口の中にプチトマトを放り込まれた。
口の中に放り込まれたから、プチトマトを歯で咀嚼すれば、プチっと口の中で弾けてみずみずしいトマトの甘さが広がった。
「ほらね、こういうことできるから、サラダも作らないと。」
クスクス笑いながら、レタスをちぎって、また私の口の中に放り込んでくる。
白地に赤い花柄のエプロン、似合ってるなぁと思う。
今すぐにでも、嫁に行けれそうだし、洋ちゃん。
私のところに嫁いでくれないだろうか。
ちょっとばかり、間違った想像をしてるなと自分の頭を振って、キッチンタイマーの時間を見た。
もうちょっとだ。
うなじに生温かい感触。
私のお腹にまわされた腕。
「よ、洋ちゃん?」
「んー?邪魔だった?」
「じゃ、邪魔じゃないです・・・。」
「口、開けて。」
後ろから緩く拘束されたまま、顔を横に向けて口を開けたら洋ちゃんが笑った声がしてそのまま私の唇を塞いだ。
さっきは、トマトとレタスだったけど、今度は洋ちゃんの舌だ。
ピピピピピピピっとキッチンタイマーの音がしたから目を開けて火を止めようとしたら、洋ちゃんがガスコンロの火を止めた。
「あぁーぁ。麺が伸びないうちに冷やして洗わないとね。はい、そこ退いて。」
ひょいっと、いとも簡単に持ち上げられて場所をどかされて、洋ちゃんが麺を洗いだした。
「美代ちゃんが火傷したら大変だからね。」
さっき、一瞬垣間見た男の顔はどこに行ったんだと言いたくなるくらいに可愛い笑顔。
いつも、私が翻弄されてる。
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