180人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなこんなの3月の後の今。
あまりに落差が大きくて、まだまだ学生気分が残っていた私にはかなりキツかった。
まして友達の多くはまだ学生だから余計に、かもしれないけれど。
本音を言うと、毎日みたいに会えるのかもって甘い考えを持っていた。
会社の近くにはちぃくんの家。
公務員って言えば定時じゃないのかって、しっかりと決めつけて。
だとすれば、5時くらいに仕事が終わってから、ちょこっと会って、その後帰ったって全然余裕だ〜なんて。
そんな甘い妄想がみごと瞬殺されるだなんて、思っていなかったけれど。
もう本当に、お仕事してみて初めて親のありがたみを感じた。
だんまりを決め込んでいた父に向かって、ふと感謝の念がこみ上げる。
「お父さん。毎日ありがとうね、働いてくれて」
自然と漏れた言葉に、家族全員が固まる。
そして、おもむろにウルウルと瞳を揺らし始めたお父さんは立ち上がって近づいてきたと思ったら、抱きついてグリグリと頭を撫でてきた。
「ことりよ。父は君たちのために働けて幸せだよ」
「お父さん……」
私が抱きしめて欲しいのはちぃくんだけど、この腕はこの腕で大好きで幸せな場所だ。
なんてことを久しぶりに思いだしながら、私も父の背中に腕を回して抱きしめた。
最初のコメントを投稿しよう!