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 「いや、全然、そんなに言うほど、……じゃ」  「じゃ、全然いいってことか」  さっきの曇り空な表情はどこへやら。城田さんは満面の笑みにほんのちょっとの意地悪さをミックスして、私ににっこりと微笑んでくる。  う~~~っ、なんだかずるい、この人っ!  「全然いいとかそんなわけじゃないですっ。だからブラックなんじゃないんですか!?」  「えーっ! ピヨちゃんまでブラックとか言うなんて、酷くない?」  「酷くないです~」  「ふーん? そんな後輩はこうだっ」  とか言いながら、両手で頬を摘ままれて、みよん、って伸ばされた。  私はまさかの事態に、顔が赤らんでいく。  ちぃくん以外の人にこんなことをされたことがなくて、予想外の行動にどうしていいのか分からない。  「ひ、ひろはひゃんっ」  真っ赤になりながら、名前を呼びかけて離してくれと訴える。恥ずかしさのあまり、目が潤んでいるなんて気が付かずに見上げていたら、エレベーター乗り場付近でやらかしていたそのやり取りを、人事課の白田さんに見られた上にクスクス笑われながら、言われてしまった。  「こらこら、いちゃつくなよ」  驚きの単語に、私は目を見開いて、強引に手を掴んで離してもらった。  「あのっ、い、いちゃついてた、わけじゃっ」  「あはははっ、可愛いねピヨちゃん。ダメだよ、ブラックを付け上がらせちゃ」  「ちょっと、僕をブラックにしないでくださいってば」  慌てふためく私をよそに、わははと笑って上機嫌の白田さんに、参ったなとかいいながら、頭をかく城田さん。  私はただただ、赤くなりすぎた頬を両手の甲で冷やしながら、恥ずかしいの静まれって祈った。
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