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 「ピヨちゃんってさ」  「はい」  「彼氏とか、いるの?」  「……え?」  「あ、セクハラ~とか言わないでよ?」  そう言いながら、振り返られて、私は思わず口元を隠した。  なんて言っていいのか、言葉に詰まる。  もうあほだって真理亜に言われるんだけど、彼氏がいますっていうフレーズを言うのが、まだ恥ずかしいのだ。  ちぃくんは、私の彼氏なんだけど、その、なんていうか。  彼氏っていう表現じゃなくて、ちぃくんなんだ。うまく言えないけど。  とか、いっぱいちぃくんの顔が浮かんで来たら、しまいに顔が赤くなっていたみたいで、髪の毛の間からぴょこりと出ていた耳を指摘された。  「うん、いいや。答えなくて。ピヨちゃんのお耳って雄弁だね」  って。  意味が分からなくて、口元を隠していた両手で耳を塞いだら、あははって笑われてしまった。  私には、まだまだ社会人って、難しい。
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