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「俺、1ヶ月も琴莉に触れてないんだけど」
「ち、ちぃ、く」
「もう、充電切れかなー、なんて」
「えと、あの、」
ドキドキが急上昇して、呼吸がうまくできなくなる。
3年以上も一緒にいるでしょと言われるんだけど、月に1度か2度しか会えなかったことを思うと、私はまだまだ慣れない。
おまけに普段のちぃくんはそういう雰囲気全く出さないから……ってそれは私がそう感じてるだけだって言われるけど。
とにかく、急に距離を詰められるとまだ、タジタジしちゃう。
慣れた手が、腰の後ろで組まれて離してもらえない。
唇が私の耳元から遠ざかると、額をこつりとぶつけられた。
メガネのフレームが途端に間近に迫って、私の心臓がドキって響きそうなくらいバクバクしている。
最初のインプットのせいだろうか。こうされると、合否発表の日のことを思い出す。
神楽千歳だって教えてもらった時に、人の名前を教えてもらって、こんなに幸せになれることがあるんだって初めて知った。
名前を呼んでもらって、こんなに自分の名前が素敵だなんて思える日がくるだなんて思わなかった。
そんな懐かしいことを思い出しながら、近い距離で見つめ返すと、ふいにちぃくんの目に意地悪なものを感じ取った時には遅かった。
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