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平凡な日常。
それはとても退屈な日々だと少女は言った。
まだ日も登らぬ時間、少女は重たい瞼を開ける。
12月の中旬だけあって、この時間だとまだ外は真っ暗だ。
少女は温もりのある布団からゆっくり出ると、カーテンを少し開き、まだ鳥も鳴かぬ窓の外を見つめた。
まだ少し眠いのか、少女の瞼は半開きだ。
しばらく見つめると、少女はその場で背伸びをし、体を伸ばす。
すると「よしっ!」っと言って、1人暗い部屋で握り拳を作って気合いをいれる。
「おはよう遥香…
今日は随分と早起きなんだね」
少女、遥香は自分の部屋から出て、1階のリビングに居た父親に挨拶をしに行く。
父親といっても、この男性は既に70を超えていて、実の遥香の父親ではない。
遥香がまだ幼い頃、偶然通りかかった道で見つけたらしい。
男性はそれからというもの、遥香を1人で育て続けた。
言わば遥香にとっては、本当の父親も同然なのだ。
「おはよう…!
お父さんも今日は早いんだね
お仕事?」
「あぁ、今日は少し遠出でね
朝早くから出なきゃ間に合わないし、帰りも遅くなるだろうからね
先にご飯食べてて平気だよ」
男性はとても優しく微笑むと、遥香はそれに負けないくらいの笑顔で返事をする。
時計の針が丁度5:30分を指した頃、男性は時間をすっかり忘れていたのか、慌てて支度をしてリビングを出た。
遥香も支度を手伝うと、男性が出て行った玄関に立ち、見えなくなるまで背中を見送った。
少し呆れた表情でため息をついたが、その顔には微笑みがあった。
男性が作ってくれたであろう朝食を済ませると、遥香は寝間着として着ていた白のひざ下まで丈のあるワンピースから、学校の制服へと着替える。
テレビのニュースが6:25分を知らせる。
まだ実際には早い時間だが、遥香はこの時間には既に家を出ていた。
薄暗い外はとても寒く、遥香の頬を赤く染める。
翡翠色の瞳を瞼で隠し、両の手で口を塞いで息を吐いた。
小麦色に似た腰までの長く、天然パーマのかかった髪をなびかせ、遥香は学校までの道を歩き始めた。
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