2人が本棚に入れています
本棚に追加
――――そう。其れは九月。中旬の事であったと、彼は記憶している。
とは言えソレは、彼にとって、其の時間軸が曖昧と化す程に年季の入った出来事では無かった。寧ろ、赤色の塗料も褪せぬ間の以前の事であった。
しかし、中旬と言う表現を用いるのは、彼を鑑みるに全く的外れでは無く、正鵠を射ていると言う事すら出来る。
彼にとってソレは一枚絵の様なもので、時間軸だとか、そう言った雑多な――整理番号の様な物は些細なものであったのだ。
言うなれば、在るがままが全てで。
そして全てが、在るがままで終わっていた。
空には月が在って。
月の下には我々が居た。
――コレは、そんな物語だった。
最初のコメントを投稿しよう!