第一話 お前があんな顔するから

4/4
前へ
/4ページ
次へ
「しねーよ。」 「ん?」 「そんなの、本当に好きなやつとしか、デートなんてしないんだよ、俺は。」 表情を悟られないように口を肘でぬぐいながら言ってやった。 一瞬、間が空いて、「そっか。」と呟いて岸はまた笑った。 「そういえば知ってる?オジサンって名前の魚いるんだよ。 髭みたいなのが生えてんの。保存しといたんだ、見る?画像。」 「オジサンがいたら、オバサンて魚もいるのかよ。」 「わ、珍しー。澤ちゃんが掘り下げてきた。 明日雪降ったりして。」 「ばか、今何月だと思ってんだよ。」 「えっと、7月だっけ?ふふ。」 岸は嬉しそうに俺を見ながら笑った。 なんかもうこれ、デートみたいじゃん。 俺だけだけど。 はあ。 お前みたいに脳が鈍感になればいいのに。 そしたらお前の笑顔をもっと、 もっとまっすぐ眺められるのかな。 そんな気持ちをいつもの予鈴が遮った。 休み時間がこんなに短く感じたのは、初めてだった。 to be continued...
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加