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“焦る”
まただ、また今日も辞書で調べてみた。
違うんだよな、この気持ちはそういうのじゃないんだよな。
なんでだろう。
あいつといると、なんでか焦る。
確かにちょっと顔は、男にしては綺麗なほうなのかな。
だって、睫毛ってあんなにきらきら揺れるのか。
はは。きらきらだって。
きらきらなんて言葉、何かの歌で聞いたくらいだ。
そういえば、魚ってきらきらしてるか。
あとなんだろ、やっぱきらきらって言ったら、星だよな。
いやいや。
そんなことはいいんだって、そうじゃないんだって。
はあ。
もう寝よ。
あいつの夢見れるかな。
だから、違うって。
これは、ただ、焦ってるだけなんだ。
岸と俺は、幼馴染っていうか、ただ家がちょっと近いだけで。
今まであんまり話したことなかったのに、
小学校の時に家の前で鍵見当たらなくてあたふたしてた俺を、
自分の部屋の窓からぼーっと見てたお前。
目が合った瞬間、さらっと手招きしたお前。
母さんが仕事から帰ってくるまで、よくわかんない虫の話を永遠をしてたお前。
頭いいんだねと言うと、頭がいいんじゃなくて、興味あるだけなんだよと、
すました顔で笑ったお前。
興味か、興味があればお前は、そういうすました顔をするのか。
はにかむのか、そうなのか。
その時だ。
その時に、俗に言う、恋に落ちたのかもしれない。
と、
自分が女だったら思うんだろうなと、幼いながら察知した、
風の匂いが心地のいい夏の夕方のことだった。
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