囚われの小鳥は愚かに鳴く

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海を越えた東に広大な大陸を臨む島国レンディア。周囲を海に阻まれ、その豊富な海洋資源や島中央に座する火山から産出された鉱物により独自の発展を遂げてきた。過去その資源を狙った国が攻めてきたものだが、王自ら率いる軍勢は強靭そのもので、幾重にも渡る大陸からの侵略にも決して屈することなく自国の平和を守ってきた。 十六年前に勃発した帝国タルタロスとの戦争を膠着状態に持ち込んだ末、和平条約に調印。以来内戦も無く平和な刻が流れている。それゆえ各国からの時の王への評価は高く、また王自身も人徳に厚い人物で、猜疑心を断ちどれだけ些細でも真を追求する人物だと伝えられている。 中央に火山があるため、南部、東部の海沿いに港街が点在している。首都モロも東の海に面していた。対して西部や北部は過去の噴火で土地が枯れてしまい、廃村や灰が降り積もったまま手付かずになってしまっている森ばかりだ。そのため闇に生きる魔物や野盗の巣窟になっていると聞く。 丁度春も暮れに差し掛かる頃だった。首都モロでは普段では類を見ない浮かれ気で溢れていた。人も動物も物流も全てがそわそわと浮き足だっているかのようだった。皆がこれから来るであろう大きな催事に向けて動き回っている。 ーーーレンディア王には四人の子供が居た。長男ラティクス、次男エルドラド、三男ラージェ、末娘ジャーシャ。母である王妃は不幸にも逃亡中黒魔術の流れ弾に命を散らされた。それから十六年経った今、末娘のジャーシャが成人の儀式を迎えようとしていた。 レンディアの国では成人は男女共に満十八歳。王族である王女ジャーシャの成人の祝祭、”裳着”に街は浮き足立っていたのである。裳着の儀まであと三日ばかり。街をあげての祝祭の準備はほぼ整いつつあった。 しかし、当のジャーシャ姫は王城の窓から騒がしく動き回る城下町を見て溜息をついた。
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