囚われの小鳥は愚かに鳴く

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レンディア王国では王族の女子が成人の際に通過する裳着の禊として、処女であること、そして一月もの間、肉や魚を食してはならないという掟が定められていた。もし掟を破ってしまえば、成人と認められず、王位継承権も剥奪される。 「王族ってなぜこんな面倒しなきゃいけないんだろうね」 ジャーシャの問いに、サキは王族の責務という言葉を出しかけて呑み込んだ。そんな事はジャーシャ自身が嫌ほど分かっているはずだから。 「ごめんなさいサキ。嫌な質問だった」 「いえ、幾らでもお聞きします。あと少しの辛抱ですよ。姫様」 そう言うとサキは盆に皿を載せ、一礼の後部屋を去った。また独りの空間になる。ーーーただ生きている。それが自分の役目。戦争とも日々生き抜くことから誰よりも遠い世界に置き去りにされることが自分の役目。言い聞かせようにも納得できるはずもなく彼女は寝台に転がった。間も無く黄昏時のまどろみが彼女の瞼をゆっくりと閉じていった。
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