囚われの小鳥は愚かに鳴く

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ーーー同刻、最後の謁見を終えたレンディア王モロは玉座を降りて城の裁断室へと向かった。 部屋に入ると機を織る女たちは一斉に跪いた。 「良い、続けてくれ」 女たちは御辞儀して再び作業を始める。しかし幾度となく視線が自分に向くのを彼は感じた。その後暫くして王の後ろから、王の立派な体躯と対照的な小柄な小柄な爺が顔を出した。 「やはり気になられますかな?」 ひょうきんな声を出したのは大臣のタダン=タダメル。二代前の国王から長らく王家に仕えている忠臣である。 「当たり前だ。ジャーシャには女というだけで我慢ばかりさせているからな。それに、あれの根っこには母に似て意地っ張りで男勝りな所がある。召し物くらい良いものを着せてやりたい」 「親心ですな」 モロ王は頷いた。丁度裁断の音が止み、新しい召し物が抱えられる衣擦れの音だけがモロの耳を撫でた。 「陛下、王女殿下のお召し物、こちらに仕上がりました。如何でしょうか」 女が二人掛かりで机に並べた衣装を見たモロは感嘆した。 新調された服は伝統的な白を基調に柔らかな絹で編まれており、優雅な金の刺繍が流麗な線となって刻まれている。金は精霊信仰の加護を最も受ける素材で縁起が良いと云われているもので、特別な着物にあしらう事が多い。 「文句無しの一品だ。あの娘にも良く似合うであろう」 女たちは畏れ多いと深々御辞儀をして、丁寧に儀礼服を畳んで仕舞った。モロは満足そうに頷くと老大臣を連れ立って廊下へと出た。 「タダンよ、帝国に動きは?」 タダンはゆっくりと足を止めた。王を見上げたその顔は齢より少々老けて見えた。
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