始まり

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俺は今、某有名RPGのチュートリアルで遭遇しそうな水色のジェル状の生物に追い回されていた。 事の発端はいつものごとく眠気に押されつつ、学校から家路についていたころである。 突然発信者の名前も表示されずに電話がかかってきた。 『あなたの家を少しばかり迷宮に改装させていただきました』 女の子のこの一言で電話は切れた。 考えていても仕方がなく自宅に入ったところ、案の定謎の洞窟へと変貌していた玄関がそこにはあった。 そうして自宅に入って2時間が経とうとしている。 携帯の電波は届くようで家族には少し遅れると連絡し終えていた。 そして、自宅に入ってからの変化は内装の迷宮化の他に視界の右下にHP、MPが表示され、コマンドセレクトとコールすればステータス窓が出現し音声で操作が可能だ。(説明書らしきものが入ってすぐにあった) まるでMMOのダンジョンを自らの体で探検しているかのようだ。 モンスターの攻撃がヒットすれば無論、HPは減少する。 今現在、俺のHP残量は400のうち300程度残っている。 よく考えれば自分の命が可視化されることによって逃げるタイミングを図ることができる。はじめはそうだと思い込んでいた。 しかし、現実はやすやすとその考えをへし折ってくれる。 ゲームの中の主人公たちが逃走可能なのは、レベルなどに見合ったモンスターがエンカウントするからだ。この迷宮ではそうはいかない。そのうえ、あの世界の住民はたいてい生まれたときよりモンスターの居る世界が当たり前なのである。 だが、俺は数時間前にいきなりファンタジーな自宅に勝手に改造され、ステータスは存在するものの初期値のままで装備品は学生服上下、革靴、学生鞄といった防御力も攻撃力も皆無な代物ばかりだ。 そして、何とかモンスターを撒いて扉を発見した。 勢いよく開くとリビングだった。 家族は仕事で不在が多い両親だが今日は母親がいた。 俺は慌てて母親に後れた事情を話す。 しかし、母親は気でも狂ったん?と、出身地である京都弁で返してくる。 そして、そのまま俺の忠告を無視して廊下へと消えた。 もちろん、すぐさま後を追いかけたのだが、母親の姿と母親が部屋から出て行く際に見たいつもの廊下は面影もなく消えうせていた。
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