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「おはよう、澤ちゃん。」
教室に入ってきた岸はいつものように俺にちゃん付けの挨拶をした。
そんな俺はちょっとうつむき加減でいつものように挨拶を返した。
恋する気持ちなんてないんだよ。
友達としての気持ちなんだよ。
別に焦ってないんだよ。
あれ?
今、俺は、焦ってるのか。
だとしたらこの気持ちは、
この焦りの気持ちは、なんだ。
帰ったら、辞書で調べよかな。
「どしたの?何かテンション低いね。何かあった?」
そう言って覗き込む岸に、また気持ちを悟られないように切り返した。
「何もねえよ。ちょっと寝不足なだけだ。」
そう言って席に着いた。
俺の顔を覗く岸の顔はいったいどんな顔をしていたのだろうか。
岸はやたら顔を覗き込む仕草をする。
顔面偏差値高めのお前が真剣な顔しなくても
そんなことしたら、女子はくらっとするんだろうな。
俺でも照れるくらいだし。
今のはナシ。
最後の文はナシ。
とりあえず今日は普通に授業受けて、
高校生としてやるべきことをして帰ろう。
それが日常だ。それが義務だ。
何も聞いてないように、
何も知らないように、
あんな話聞く前の俺に戻って、普通にしてよう。
そして、今日はひっそりと帰ろう。
岸、今日は一人で帰ってくれ。
明日からは、普通の俺に戻ってるからさ。
今日は、まじで、許して。
そして、そんなことを思った俺の気持ちを知るはずのない岸に、
放課後「話があるんだよ。」と腕を掴まれることになるなんて、
この時の俺は、もちろん夢にも思ってないんだ。
はあ。
なんで事件は、放課後に起こるんだよ、まじで。
to be continued...
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