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「えぇぇ!?!?それで?警察には?」
「被害も無かったので………言った方がいいですか?」
次の日、怒濤のランチタイムを乗り切った後。遅いお昼を食べながらバイト仲間に昨日の事を愚痴った。
「小澤さんらしいっちゃ小澤さんらしいけど………金持ちの考えることは分かんないね。」
「何も無くて良かったけどね、気を付けて帰りなよ?今日は17時あがりだから暗くないと思うけど……」
パートのおばちゃんに口々に心配されて、やはり警察に言うべきなのかと思案する。
「小澤先輩の判断の方が正しいですよ!下手に警察に言って、金持ちらしく報復されたらどうするんです!?」
1個下の早水ちゃんの言葉に吹き出す。本人は至って真面目だが、そんな話は小説の中や漫画の中の話だ。
「とにかく、先輩。気を付けてくださいよ!また同じ奴が来たら男として終わらせちゃってください!」
指ではさみを作り、切るジェスチャーをする早水ちゃん………。かわいい顔して言うことはえげつない。苦笑しながら話を終わらせた。
まだ日が出ている内に帰るなんてかなり久しぶりだ。スーパーに寄って特売98円の卵を買ってから帰路につく。からからと自転車を押していると、母の車が停まっていることに気づく。
(夜勤明けで帰ってきたんだもんな……)
車の横に自転車を停めると、玄関を開けた。
「………何これ。」
廊下に積まれた大量の段ボール。なんでこんなことになってるのか全くもって分からない。
「あっ、おかえりー。帰ってきて早々悪いけど、大事な話あるからこっち来て。」
黒のジャージを着た母に促されるまま、リビングで向かい合わせに座る。どういうことなのかきちんと説明してほしい。
「私ね、転勤することになったんだ。だから引越すことにした。」
「…………つまり?」
「みっちゃん悪いけど、一人暮らししてくれる?」
両手を合わせてウィンクする母に、私は衝撃のあまり言葉が出なかった。
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