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さて、困った。駅に着いたら母の知り合いの人が迎えに来ると言っていたが、さすが都会。 「人多すぎじゃ………」 中華街のあるこの駅は、同じ県内とは思えないほど開けている。きょろきょろしているのも不自然だから、見つけてもらえるまでベンチに座っている事にした。 「すみません、小澤さんですか?」 声をかけてきたのはスーツ姿の男性だった。おじさんと呼ぶには老いていて、おじいさんと呼ぶには若い、不思議な人だ。 「静香さんから話は伺ってます、私はマンションの管理人の水野と申します。」 深々と頭を下げられて、落ち着かない。水野さんに案内されるまま後ろを歩いて行く。 「家具や家電もありますが、他に必要なものは買い足してくださいね。」 「ご丁寧にありがとうございます。」 そんなに腰が低いとどうすればいいのか分からないからやめてほしい。駅から歩いて5分もしないうちに足が止まった。 「こちらになります。」 「えっ!?!?!?」 何十階もありそうな高層マンション。入口には警備員まで立っている。 「本当に?私が?ここに?」 「左様ですよ。中へどうぞ?」 警備員に何かを見せた水野さん。どうやら部屋はカードキーらしく、警備員に見せないとマンション内にすら入れないらしい。 「小澤さんの部屋は5階です。敷居が高そうに見えるかもしれませんけど、5階以下は普通のアパートと変わりませんから。」 「そっ、その方が嬉しいです………」 かちかちになった私を見て、ふっと笑う水野さん。世の中にはこんなに上品に笑う人もいるんだなと感心していると、エレベーターが停まった。 「この階には三部屋あるんですけど、使われているのは小澤さんともうお一方だけですから。あまり隣人関係はお気になさらず。」 「ちなみにどのような方で……?」 引越しの挨拶も行った方がいいのか、それともそういうのは迷惑がる人なのか………。どのくらいここにお世話になるかは分からないけれど、それなりに付き合いは持っておきたい。 「とても穏やかで優しい男性ですよ。」 にっこりと微笑みながら言われて、少しほっとした。水野さんが一礼して去ったあと、カードキーをスキャナーに通してから部屋に入った。
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