第7話

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「うーん……そうだね。でも、まだ日本酒残ってるし」 一方、乾課長の側から離れたくない。けど、そんなことを口にできる筈もない飯山さんは、手にしたお猪口と、隣に座る乾課長を交互に見ながら、佐藤くんの誘いにしどろもどろに答える。 「じゃ、俺も手伝うよ。課長、そこのお猪口取ってくださーい」 鈍感な佐藤くんは、飯山さんがやんわりと断っていることにも気づかず、あろうことか、隣のテーブルを指さし、課長にお猪口を取らせようとした。 「あ、あの、佐藤くん。こっちにあるから」 課長に気を使った飯山さんは、近くにあったお猪口に慌てて手を伸ばし、それを佐藤くんに渡す。 「ありがとう。気が利くねー、飯山さん。雛森さんとは大違い」 気を使ってばかりの飯山さんを気の毒に思った訳ではないが、「ねー」と笑顔で私の顔を覗き、冗談半分で同意を得ようとする佐藤くんに 「あなたに言われたくありません」 無表情に冷たい言葉で返した。
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