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何故、何で、どうして。
疑問符が落ち着きなく動き回る頭が、この苗木の存在をそれでも理解出来たのは、伝票の差出人にTickーtack商會と書かれていたからだった。
少しでも清々しい朝を迎えられれば――などと根拠のない期待に胸を踊らせて書いた手紙ではあったのだが、こうして手元に届いたのがまさか時計ですらなかったとは。
いや、元より実体の知れないものだったのだ。驚くのは些か大袈裟なのだろうが。
無機質なこの自宅にも、僅かながら芝生で覆われた庭と呼べる空間がある。
予期せぬ形ではあるが、縁あって僕の元に届けられたのだろうと妙に納得し、いずれ自分以上に成長するであろう未来の大木を庭の中心に植え替える事にした。
麻布で包まれ息苦しそうにしていた根も、これで少しは楽になるだろう。
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