第3話 火事場の鈍感力

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はあ。 早く帰りたい。 つーか、久しぶりに来たな、屋上。 というか、初めてか。 でもなんかこういう状況知ってるぞ。 あ、そうか、夢で見たのか、この状況。 でも相手はお前じゃないんだよ。 確か髪の長い子で、足が細くて丸顔で、 世間的言えばそれはもうかわいい・・・ 「澤ちゃん。ごめんね、腕めっちゃ引っ張った。」 事の発端は、放課後。 せっかくひっそりと帰ろうと思ったら、 がっしりと腕を引っ張られ、見る見る間に空に近い場所まで連れてこられた。 「帰り道で話すんじゃ駄目なのか?」 「メールでも電話でも出るからさ、とりあえず帰らせてよ。」 「買い物しないといけないんだって、母さんに頼まれてんだって。」 全部の言葉を飲み込んだ。 無言でとりあえず身を任せてついて行った。 そういえば、こいつ結構握力強いんだな。 確か指が長かったはず。 ったく、こんなこと知ってるんだか。 「どうしたの?何か今日変だよ。」 そんなこと帰り道でも聞けるだろ。 「ノリが違う。何かが違う。」 何も違わねーよ。つかお前だろ、いつから恋なんてしてたんだよ。 「何か俺、怒らせるようなことした?」 何もしてねーよ。お前に好きなやつができたってだけだよ。 「もしかして、落ち込んでるの?」 鈍感頭が、この状況で何敏感になってんだよ。 「澤ちゃん。もしかして、知ってるの?」 一瞬岸の表情が固まってのを、ずっと俯いていた俺の視線の先に感じた。
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