第1章

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桜が散る4月。 例年より温かくなるのが早かったせいか桜の開花も早まり、つい最近あった入学式にはすでに葉桜になっている物も多かった。 今もまだ所々咲き誇る桜並木を歩いて、同じ制服に身を包んだ進学校である雅ヶ丘の生徒達に紛れて一日の大半を凄く学校へと向かっている。 中高一貫のここは無駄に敷地も広い。 勉学以外にスポーツにも力を入れているから、グラウンドやらが多いんだけど。 そのせいで校舎までが長いんだよね。 下駄箱に付き、そこを開ければ自分の上履き。 それ以外入っている訳もない。 けれど、その上履きを持ち上げ、少し傾ければジャラッと画鋲が数個現れた。 「凄いな…」 思わずスマホを取り出し、パシャッと写真を撮る。 それを添付して送る先は、二か所。 田辺真司と言う奴と、常盤都筑と言う奴だ。 どちらも僕より年上の知り合い。 こういった馬鹿馬鹿しい事が好きな二人に送り付ける。 中学の時からの習慣になっている事だ。 虐めが延長しているだけ。 けれど"虐め"と言ったって僕自身虐めとあまり思っていないし、どうでもいいからこういうことが出来るんだ。 でも、もし二人にまたこういったものを送っているとあの二人にバレたらどうしようと思う。 僕を心配してくれる先輩と、僕の一番大切な人。 先輩は涙目になりそうだ。大切な人は凄く怒りそうだ。 「それは嫌だな」 手の平に画鋲を落とし、上履きを履いて靴を下駄箱に入れる。 そして、廊下にあるゴミ箱に画鋲を捨て教室に向かう。 中学の最初の頃は、僕と似たような身長のやつは上の学年に居る程度だったけれど、高校にもなれば似たような身長のやつはそこら中に居る。 ちっさいのも居るけれど。 異質、ではなくなったか。 目立つとすれば、髪と目の色だけになった。 「四之宮~~~!」 前髪に触れていれば後ろからやっと慣れた名字を呼ばれる。
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