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未知の世界の冒険、その準備ほど心踊るものはない。
どんな生物がいるのだろう、どんな景色があるのだろう、どんな困難が待ち受けているのだろう。
妄想に心を膨らませながら、背嚢と外套のありとあらゆるスペースに旅の必需品を詰め込んでそれらも膨らませていく。
冒険家の至福の時である。
暗い安宿の部屋を照らす紫の淡い光に、我々の世界から持参した鉄製のタクティカルナイフを煌かせる。
この部屋の天井からぶら下がる照明は"鉱石灯"と謂う。
この世界で採れる鉱石の中でも価値の低い発光性の屑石を、そのままひっくり返して風防を被せただけの簡素な照明。
明るさを一定にさせる加工や光の無色化をしていないため、ちらつきがひどくその光量も低い。
しかし非常に安い価格で生産できるため、貧民街で暮らす者にとっては、なくてはならない生活必需品である。
「ふむ。」
そんな光に照らされて、ギラギラと煌めくタクティカルナイフに私は鼻息を鳴らす。
毎晩暇だった私はこれを一心不乱に磨いていた。そのお陰と言うべきか、そのナイフはまさに業物と呼んでも差し支えないのではないかという輝きを放っていた。
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