第1章

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「ゆきちゃん、ゆきちゃん」 「なーに?」 「目瞑って、口アーンして」 厨房で食器を洗ってた手を止めて、駆け込んで来た彼の言われるままに目を閉じ口を開ける。 「はい、口閉じてー」 スッと何やら口の中に入れられて口を閉じると、ポキッと折れる感触がした。 甘いイチゴとチョコの香り。 「あ、イチゴポッキーだぁ」 大好物のその味に、思わず顔がにやける。 「しかも白いよ?」 手にしたポッキーの色がいつもと違って、俺は目の前の彼を見上げた。 「うん、期間限定ホワイトチョコ仕様だって。もうチェック済みだった?」 「ううん。全然知らなかった」 俺としたことが、こんな当たり商品を見逃してたなんて油断してたな。 「今日が発売日らしいよ?」 そっか。今日からか。 なら気づかなかったのもしようがないな。 それにしても… 「どう?美味しい?」 「うん!いつものもいいけど、このホワイトチョコのも美味しい!」 もともとホワイトチョコ好きだし。 イチゴの粒が見えないくらいホワイトチョコでコーティングされてるのがいい! 「ゆきちゃんなら、絶対気に入ると思った。はい、全部あげる」 「え?いいの!?」 「もちろん」 「やったー!」 箱ごと手渡されて、俺は嬉しさのあまり満面な笑みを浮かべた。
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