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ではでは、ゆきちゃんの大好物の親子丼をいただきますか。
なるべくゆきちゃんが食べた所から取っちゃお。
スプーンからの間接キスが不可能になった今は、それしか方法は残されていない。
俺は躊躇いもなく、受け取ったスプーンをゆきちゃんの食べかけゾーンへと持っていった。
「陽介くんも絶対気に入ると思うよ」
ニヘッと屈託のない笑顔のゆきちゃん。
俺の下心なんか微塵も感じとっていないであろうその笑顔に、俺は罪悪感を覚えた。
ごめんなさい、間接キスとか下心丸出しにして。
はぁ、と軽く自己嫌悪に陥りながら俺はまだゆきちゃんが手をつけていない所から親子丼をスプーンに乗せると、それを口に運んだ。
「あ、美味しいかも」
「ほんと?てんちょーもここの親子丼好きって」
うんうん、本当にこれは学食の親子丼とは思えないほど美味しい…
ん?
あれ?
てんちょー?
「ゆきちゃん?今、てんちょーって?」
え?なんで、てんちょーがここの親子丼食ったことあるの?
「あ、わあぁぁ、な、何でもない!」
ひゃああ、と顔を真っ赤にさせたゆきちゃんが、思わず零れてしまった言葉を掻き消すように手をブンブン振って必死に否定してる。
「え?でも…」
「あ、俺、ちょっと用事があるんだった!ごめん!もう行くね!」
それでも腑に落ちないでいる俺を見て、ゆきちゃんは慌てて席を立つと呼び止める間もなく逃げるように走って行ってしまった。
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