春の夢

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 彼女の一人暮らしのマンションから駅までは、歩いて十分程。 道沿いに桜並木があって、今年は少し早い桜がもう満開だった。 「お仕事は大変ですか」 「そうだね、まだまだ新人だから、うまく行かないこともあるけど、それなりに頑張ってるつもりだよ」 「そっか。  私は大丈夫かな、ちょっと不安かも」  車が車道を時折過ぎていく。 駅までは少し坂を上り、やがて下り坂になる。 春休みの子供たちが走り、散歩する人も多い。 「石川まではどれぐらいかかるの?」 「特急で二時間半ですね。  湖西線で。  今日は晴れてるから、琵琶湖が綺麗だと思いますよ」 「そうか。  一度遊びに行きたいね」 「ぜひ来てください、金沢の手前で、美川という所です」  美沙は嬉しそうに笑った。 笑うと瞳がきらきら輝いて、その瞳に前髪が少しかかった。 色が透き通るように白く、頬は淡いピンクだと、僕は初めて気がついた。 僕は彼女の仕草を見ていたかったが、なぜか少し焦って、目を逸らした。
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